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少し恥ずかしそうに答えるエーデル。
その言葉に、ヴィレンスは最期の力をふり絞るように体を起こした。
「ダメです! 動いては――」
焦るエーデルの口を塞ぐように、ヴィレンスは口付けをした。
二人にとって、初めてのキスはエーデルの血の味が混じっていた。
でも、温かくて、優しくて、このまま時が止まってしまえばいいとエーデルは願った。
その願いは届かず、ヴィレンスがゆっくりと唇を離す。
「……なんだ?」
すると、ヴィレンスが自分の身体におこっている異変に気付く。
なぜか、全身の痛みがどんどんと引いてくのだ。それだけじゃない、使い切ったはずの魔力が戻っていく。
足の傷が塞がっていく感覚まであった。
「ヴィレンス様……?」
「どういうことだ」
数分もすれば、すっかり傷が癒え、体力も魔力も回復していたのだ。
「エーデル、お前の力か?」
「わ、わたくしはなにも……」
何がおこったかわからないと言う様子でキョトンとするエーデルの顔を見て、ヴィレンスがほほ笑む。
「お前は、本当におかしな人間だ」
そう言いながら、ヴィレンスはエーデルを抱きしめた。
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