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その唸り声を聞いて、エーデルはさらに足をすすめた。聞き覚えがあったからだ。
「……!」
エーデルが生い茂った草をかき分けると、そこには一匹の狼が苦しそうに横たわっていた。
白銀色の赤い目の狼。
「大丈夫ですか……!」
エーデルは思わず駆け寄った。
間違いない。あの時助けてくれた魔族の狼だ。
「近づくな」
恐れることなく近づいてくるエーデルに、狼は低い声で警告する。
それでもエーデルは気にせず、狼のそばに寄った。
「大変、血が出てる……」
白銀色の毛を染める真っ赤な血。
後ろ脚には、剣で切られたような深い傷があった。
エーデルはすぐさま、着ている衣を手で切り裂いた。
「何をしている!」
それに気づいた狼が、エーデルを見てまた低い声で怒鳴る。
「大人しくしていてください」
その声に構わず、エーデルは割いた布を巻き付け止血した。
触れられた痛みで狼が呻きをあげる。
「なにか薬草……あ、そうだ。私の腕をお喰べください!」
「は?」
傷にいい薬草はないか考えたエーデルは、思い出したように自分の腕を狼の前に差し出した。
その言葉に、驚く狼。
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