血を与えし者の運命

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「魔族の方は、人間を喰べると回復すると聞きました。なので、私の腕をどうぞお喰べください!」  純粋な目で、小鹿のように細い腕を差し出してくるエーデルに、狼はあっけにとられてしまった。 「貴様は何を言っている」 「え? ですから腕を」 「そんな細い腕の一本じゃ、この傷は治らない」 「ならば、脚をお喰べください! 脚なら腕よりもふくよかです!」  エーデルは腕をひっこめたと思ったら、今度は脚を差し出した。  曇りひとつない真剣な目で、脚を差し出すエーデルを見て、狼は思わず笑ってしまった。 「人間とは愚かな生き物だと思っていたが、ここまで愚かな人間がいるとは」  そう言って、狼は月を見た。  狼が月へと視線を送ると、急に体が光に包まれる。  その眩しさにエーデルが手で顔を覆った一瞬で、狼は人の姿になっていた。 「えっ」 「驚いたか」  姿形は変わったものの、脚に巻いた布からは血が滲みでている。 「この姿なら、お前も脚を喰えなどとは言えないだろう」  そう言いながら、再びエーデルに視線を向ける。
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