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人の姿になっても、髪の色は白銀色で瞳は赤く、頭からは耳が生え、ふさふさの尻尾もある。
エーデルが初めて見る、人狼の姿だった。
「い、いえ! 傷が治るまで喰べてもらわないと困ります!」
それでもなお、エーデルはその男の前に腕を差し出してきたのだった。
「貴様は……おかしなやつだなっ」
頑なに自分を喰べろと言ってくるエーデルに、男は笑いをこらえられなかった。
その男の笑みを見て、エーデルは一目で恋におちたのがわかった。
「な、なんで笑うんですか」
「人間は普通、命乞いをするものだろう」
「他の魔物を見たらそうします!」
「ならば、なぜ私にはしない」
「それは……以前、助けて頂いた御恩がありますので……」
エーデルが少し恥ずかしそうに言う。
その言葉を聞いた男は、エーデルの顔をジッと見つめる。
「そ、そんなに見ないでください!」
赤い瞳に見つめられ、頬を赤く染めるエーデル。
金色の髪を見て、男は気付く。
「……ああ、あの時の娘か」
記憶の中から、いつか助けた少女のことを思い出した。
「あの時は、お礼も言えなかったので……」
「まだ生きていたか」
「おかげさまで」
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