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「御船座衛門! 覚悟!」
「!? せいっ!」
カキーン!
「む? 小娘だと? 何だ貴様は?」
「離せ! 私は貴様に殺された佐野寺 十次郎の娘だ!」
「ほう……あやつ、娘がおったのか」
「父を失った悲しみに耐え切れず、母も後を追うように死んでしまった! 全部お前のせいだ!」
「……小童よ。貴様には分からないだろうが、あれは互いの誇りと生き様を賭けた正当な果たし合いだった。父から何も聞いていないのか?」
「うるさい! 全部お前が悪いんだ! お前を殺して私も死ぬ!」
「うぅむ。同情する物はあるが、あやつも罪な男だ。かような童が居ながら、武士として果てる道を選ぶとは。知っていれば受けなかったものを……いや、だからこそ黙っていたのだろうな」
「果たし合いを受けろ! ここで逃げるなら皆に言いふらしてやる! 御船座右衛門は小娘相手に逃げた臆病者だってな!」
「……仕方あるまい。その勝負、受けよう」
「よぅし! 覚悟しろ!」
***
「くっ!」
「気は済んだか?」
「殺せ! これは果たし合いだ!」
「勘違いするな。生殺与奪の権を握るのは常に強者だ」
「……後悔するぞ」
「娘、まだ我を殺したいか?」
「何を言い出す? 当たり前だ!」
「ならば強くなれ。強き師に教えを乞い、我を超える強さを身に付けよ。それが叶った時、今の続きをしてやる」
「……ぐぅ……ちくしょう」
***
「で?……一体これは、どういうつもりだ?」
「貴様に言われた通りだ。強い師に教えを乞いに来た」
「はははっ! 父の仇を討つ為、父の仇に教えを乞うか! 面白い。ならば我の持つ技を全て貴様に伝えよう。その上で我を超えてみせるがよい!」
「言われなくてもそうするさ! せいぜい寝首を掻かれないように注意するんだな!」
「ふふっ、で? 其方、名は何と申す?」
「佐野寺 多江だ! 覚えておけ! いずれ貴様を討つ者の名だ!」
🌾この二人は十年後に結婚します。
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