『そういうふうにできている』

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 このまま離れて、なかったことにしてしまえば、こんなつまらない言い合いのようなことをしなくても済むのに。  胸に蟠りを抱えて、地下に着いたエレベータから降りた。  慎也の車は、国産の高級車だった。黒いボディーは綺麗に磨かれていて、ドアノブに触るのも躊躇われるほどだ。 「俺が運転するから、お前は横に乗れ」  促されて助手席に乗り込み、シートベルトを付けた。慎也はよく行く店なのか、迷うこともなく目的地に着き、駐車場に車を入れた。  丸い窓が施されたお洒落なビル。ライトアップされた木々が落ち着いた印象を与えている。  木製のドアを慎也が開けると、背の高いすらりとした男が出迎えて、「ようこそ」と声をかけた。 「予約席はいつものように奥に用意してあります」  僕を見て、「慎也のツレにしては可愛いね」と声をかけた。 「智晴。それは俺の嫁だ。ナンパするな」 「ち、ちょっと、僕はまだ……」 「店先で騒ぐな」  慎也は驚く僕を置いて店の奥へと進んで行った。
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