プロローグ

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 発情期に発するフェロモンは時にβさえも誘惑してしまう。支配し、上流階級に君臨するαでさえもそのフェロモンに屈してしまうほどだ。予想、予定外の発情期による事故で番にされて捨てられたΩだっている。  『番契約』なんて闇契約もあって、上流階級のαにΩが大金を払って番にしてもらうという噂もある。  だから、自分が『Ω』と判断された時に間違いだろうと、いくつかの医療機関で検査も受けた。  来年には22歳になる。だけど、これまで一度も発情期を迎えていない。  このまま未完のΩのままなのかもしれないと、検査結果は間違いだろうと、半ば安心していた。  目の前の紙には、『柏木凛人』と名前や生年月日、住所などもしっかり明記されていて、その横には印鑑も置かれている。  横には両親が座っていて、目の前には明らかに仕立てのいいスーツを着た男が座っている。 「こちらが本契約書になります」  スーツの男の横に座っていた男がクリアファイルに入れられた書類の束を机の上に置いた。  契約書……。
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