Epilogue

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Epilogue

 唇を尖らせて、ふうと煙を吐く。吐き出した白い煙はふわりと漂うだけで、くうちゃんのように輪っかにはならない。  2人は死んだ。自殺だったらしい。パジャマを結んで紐のようにしたもので首を吊って死んだ、と2人の担当弁護士から聞かされた。  何を思って2人が死んだのか、あたしにはわからない。冤罪を被るのが嫌になったのか、刑務所生活にうんざりしたのか。わからないまま、あたしは1人であの時のような狭いアパートに住んでいる。  ブレーメンは遥か遠く、虐げられた動物たちが身を寄せ合って幸せに暮らす家も、今はもうどこにもない。あるのは、あのひとを殺したあたしが1人で住む、狭くて古いアパートの部屋だけ。  煙草を咥えて深く吸い込む。まだこの味には慣れなくて咳き込みそうになるけれど、ぐっと我慢してそっと息を吐いた。やっぱり煙は輪っかにはならない。  くうちゃん、かいちゃん。呟く声は、蝉の鳴き声と煙に溶けて消えた。  あたしの運命のふたりは、もうどこにもいない。
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