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「大塚!」
三澤君の声……。どうして? と思ったと同時に、会場がいっそうざわついた。ステージからレッドが飛び出し、私を横抱きにかかえたのだ。
三澤君はレッドの姿のまま、私を救護室へ連れて行ってくれた。
発作の薬を飲み、レッドのマスクを外した三澤君に手を握ってもらいながら、救急車が来るのを待つ。
「三澤君、ごめんね」
「何がだよ。倒れたことなら気にしなくていいから、目を閉じてろ。辛いだろ?」
「それもあるけど、この間のこと。心配してくれたのに、近づかないで、なんて言って」
三澤君はずっと寄せていた眉間を緩めて、頭を振った。
「いいよ、今日来てくれたし。……嫌われてないんなら、いい。それより喋んなって」
「大丈夫、酸素あるし、薬も効いてきた。……あのね、三澤君、これだけ聞いて。私ね、三澤君のことが好」
「俺、大塚が好きだ」
「えっ!」
私が言おうと思った言葉に急いで同じ言葉をかぶされて、せっかく酸素のチューブを着けてもらっているのに、息が止まりそうになった。
「ごめん。なんか、今の流れはそうくるかなと思って……先に言いたかった。もし今日大塚が来てくれたら、絶対に言おうと思ってたから」
「三澤君……ひどいよ」
「なんで!? 違った? 俺、自意識過剰?」
ううん、ううん、と首を振る。
「そうじゃなくて。……嬉しいの。でも、でも胸が苦しいの。これが好きってことなんだね」
ドキドキドキドキする。でも、リズムは狂っていない。これは間違いなく、恋のドキドキ。
凄く凄く苦しくて、嬉しいのに、切ない。
三澤君は顔を真っ赤にして、泣きそうな顔をした。かっこいいレッドのこんな顔を見ることができるのは私だけかもしれない。
もっと、もっと見たいよ。三澤君のいろんな顔。
そして、私は決めた。ずっと逃げていた大きな心臓手術を受けることを。
それから再び休学して、別の県で手術とリハビリを受けた。辛い日もあった。でも、三澤君が待っていてくれたから。
三澤君は私の左手首に「頑張れ!」と書いた新しい赤いラバーバンドを付けて見送ってくれた。
それと、「大塚が頑張るなら俺も頑張る」と言って、バイトはレッド役だけに絞って猛勉強をして、一年経った今では学校から育英金を受けている。
ますます完璧なヒーローになっていくね。私はあなたの素敵なヒロインになれるのかな?
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