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レディ・ヒース
やたら浮かれた彼女の横には仏頂面の彼氏が座っていた。まあ、大抵占ってもらおうと言い出すのは女子だ。男子は来たくもないのに無理矢理連れてこられるものと相場が決まっている。
「ユウ君と初めて会った時、ビビビッーー! って電気が流れたんです。絶対運命なんです。ね、ユウ君もそうだったんだよね?」
困ったように苦笑いする”ユウ君”。
「そうね、ふたりは出会うべくして出会ったのよ。カードにも出でるわ」
「やっぱり! そうだと思った。レディ・ヒースが言うんだから間違いないわ!」
私がカードの説明を始めると、それまでつまらなそうにしていた”ユウ君”も少しだけ興味を示した。ふたりは仲良く手を握り合い私の言葉に耳を傾けた。
「そうね……3年後くらいかしら。ちょっとトラブルが起きそう。でも2人で協力しあって乗り越えればあとは大丈夫。なんたって”運命の2人”なんだもの」
彼女とユウ君は来たときよりも仲睦まじく帰って行った。
ふたりが出ていった後、窓を全開にした。相談者の”気”が残っていると次の人の鑑定に影響が出てしまう。少し湿り気を帯びた微風が部屋に入り込む。私はそれを肺いっぱいに吸い込んだ。
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