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天啓
鑑定の依頼内容は若い女性なら誰でも抱える悩み、恋愛相談だ。
「今お付き合いしている男性がいるんです。その方から結婚を申し込まれているんですが、結婚しても大丈夫なのか占って欲しいんです」
何か不安な事があるのだろうか。
「あなたの気持ちはどうなの?」
「彼は私が付いていないとダメだと思います。私は彼を支えてあげたいと思っています。でも両親に反対されているんです」
どうせロクでもない男なのだろう。両親が反対するにはそれなりの理由があるはずだ。
「じゃあ、あなたの名前、生年月日、分かるなら出生時刻と出生地も教えてちょうだい。それから彼氏のも」
女性は自分の情報は完璧に書いてくれた。彼氏のものは名前と生年月日しか分からないようだった。
姓名判断、ホロスコープの結果は思った通りだった。真面目で働き者、その上人情家の彼女。その正反対で怠け者で自分勝手のわがまま男。これは絶対に彼女が苦労をする。一緒になるべきではない。
「苦労するわよ。幸せになりたければやめた方がいいわ」
「でも、彼は私がいないと生きていけないんです。私が守ってあげなけれいけないんです」
彼女は既に自分で答えを出している。誰かに背中を押してもらいたいだけなのだ。たとえそれが見知らぬ占い師でも。しかし占うまでもない。そんな男とは縁を切った方が身のためだ。
「じゃあ最後にカードに聞いてみましょう」
私はテーブルの上でカードをシャッフルした。それを揃え裏側のまま順番に並べていく。
「これがあなたの未来のカードよ。さて、どうかしら」
私はカードを表にした。
「……!」
手に電流が走り体を突き抜けた。たまにこんな事がある。天啓なのか、その時の占いは外れた事がない。
「運命のふたり……」
カードには男女が固く手を繋ぎ合い、天に昇っていく絵が描かれていた。
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