運命のふたり

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運命のふたり

 それからしばらくは平穏な時が流れた。彼女の事も忘れかけていた頃だった。 「一家惨殺して犯人も自殺したんだって。酷い事件ね」  たまたま訪れた家電量販店のテレビ売り場で、そんな声が聞こえてきた。普段はニュースもテレビも見ない。久しぶりに聞くニュースの内容が衝撃的すぎて、ついテレビを見てしまった。  何台も並べられている売り物のテレビで同じニュースが流れている。そして次の瞬間、見覚えのある女性の顔が画面に映し出された。 『女性は夫の暴力に耐えかね実家に帰っていた所、夫が女性宅に怒鳴り込み、家族全員を殺害、そして自分も自殺したようですーー』  私はこの事件を忘れる事ができるのだろうか。これから同じような女性が相談に来たらどうしたらいいのだろうか。  マンションに戻りカードに聞こうとカードを手にした。しかし手は震えていた。何台ものテレビ画面に映し出されたいくつもの彼女の顔が目の前に蘇る。不安で、怖くてカードがめくれない。  私は占い師をやめる事にした。占えないなら占い師は廃業だ。  あのふたりが出会ったのも運命なら、私が彼女に会ったのも運命だ。あのふたりが私の占い師人生を終わらせた。私にとって運命のふたりになった。 〈終〉
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