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「お墓をちゃんとできないのは良くない?」
「良くないよ。バチ当たりよ。できることならちゃんとしてあげたい」
「わかるよ。だけど、ばあちゃんは綺麗にしてあげられないし、息子も孫も、遠くて滅多に来れない。ばあちゃんはそれをわかってる」
祖母は下を見て小さく頷く。
「ばあちゃんはさ、自分が死んだ後、墓が綺麗じゃないって俺にバチを当てる?」
「当てないよ、そんなもの。仕方ないじゃない」
そう言って祖母はハッとする。
「そう、俺も娘にバチなんて当てない。孫やひ孫ができたとしても、同じこと。じいちゃんはバチ当てるような人?」
祖母は涙ぐんで笑う。
「当てないよ。家がぐちゃぐちゃでも平気でパチンコに出かけるような人だった」
「あはは。じいちゃんがチャランポランでよかったって、初めて思ったよ。やっぱり、バチなんて当てないね」
祖母の表情が少しずつ柔らかくなる。
きっと、もうそろそろ自分を許すことができる。
「お墓は、死んだ人のためだけじゃなくて、生きてる人のためにもあるんだと思う。花が本物かどうかよりも、今できる精一杯で良いんじゃない?」
「ありがと。悪いけど、トオルが明後日帰る前に、造花を買って変えてくれない?」
「いいよ。一緒に選ぼうか」
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