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「よーし、今日は先生の奢りでお好み焼きだぞ!」
「先生の奢りじゃなくて、先生の実家の、でしょ」
バスケ顧問の先生の実家がこの近くでお好み焼き屋をしていて、今日はそこで三年生だけのお疲れ様会をやることになっている。
三年間お疲れ様会の名目の他に、勝利の祝賀会となったことで部員たちのテンションは、だいぶ上がっていた。
体育館の向こう端では、坂下中学のメンバーが寂しそうな顔で片づけをしている姿が見えて、なんとなく居心地が悪くて私ははしゃげない。
ボールの片づけを終えて、ふと気になったのはさっきのポイントガードの彼のこと。
肩にタオルをかけた彼が不意に立ち上がり、ひょこひょこと右脚を引くように体育館の外に繋がるドアを開けるのを見た。
急に飛び込んできた外の眩しさに、瞬きをした直後、彼が落としていったと思われるタオルだけがそこに残っている。
あれ? 気づいてない?
「夕菜、どうかした?」
帰り支度をして歩き出そうとしたミホが、動かない私を振り返った。
「ごめん、忘れ物した! すぐ追いつくから先に行ってて!!」
「どこに? 一緒に行こうか?」
「大丈夫! すぐ合流する~!」
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