ドキドキ

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 そんな彼とまさか同じチームになるだなんて、驚きと。  少しの恥ずかしさと嬉しさ。  あの時のことをお互いにまだ話したことはないけど、きっとわかってるはずだ。  あれが私だったってことも気づかれてると思う。 「夕菜、ポカリ準備してー。ゆっくりでいいからね」 「はーい!」  練習の手伝いをしている二年、三年マネージャーさんたちの指示で両手に空のジャグを持ち水道に向かう。  大量のポカリを作り体育館へと運ぼうとするけど、ジャグ二個は相当重い。  腕力ないんだよなあ、がんばれ、自分!  皆、喉カラカラで待ってるぞー!  気合いを入れて持ち上げようとしたジャグの一つを目の前で掴み、持ってくれる人がいた。 「新木が無事持ってこれるかわからんから手伝ってやれって」 「アハ、ありがとう」  どういたしまして、と隣を歩く彼の身長は、あの頃よりも十センチくらい伸びてるんじゃないかな。 「今日はなんかやらかしてない?」 「まだ、やらかしてないもん!」  フンっとふくれてみせた私にアオイくんは楽しそうに笑う。  つい先日、よろけながらジャグを持ってきた私は、体育館に辿り着いた瞬間、盛大に転んだ。  ゆるんでいたジャグの口から、零れだす大量のポカリ。  バスケ部ばかりではなく、体育館にいた他の部活の生徒たち、総出で掃除させてしまったことをアオイくんは思い出しているのだろう。  いつも何かしら私がドジをしでかすことをアオイくんはもうわかっている。 「もう、笑いすぎだし!」  ベエッと舌を出したら、アオイくんはごめんねと目を細めて、私が持つジャグに手を伸ばす。 「貸して? やっぱ、そっちも心配だからオレが持ってく」  そのさり気ない優しさに、なんだか勘違いしそうになる。  そんなことはあってはいけないのに。
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