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「坂下中学出身、一年D組真柴蒼です。中学ではポイントガードでした。どうぞよろしくお願いいたします」
「あっ!」
驚きを抑えたつもりが、思わず声に出てしまっていた。
歓迎の拍手に紛れ、誰にも気づかれなかったと思ったのに、当の本人と視線が絡んでしまって焦る。
それは一秒、二秒、三秒、ほんの短い時間。
あの時のことを思い出してしまったら、心臓の音が大きく跳ねあがって、あわてて視線を逸らす。
『あっ!』て言ったの、聞こえちゃったかな?
チラリと目線を上げて、彼の顔を確認する。
私の方はもう見ておらず、次に自己紹介してる人を見上げて拍手している横顔。
やっぱり、あの人だよね? 間違ってないよね?
だって、坂下中学って言ってたもん、ポイントガードだし!
身長、あれからすごく伸びてない?
髪型も少し大人っぽくなった気がする。
「じゃあ、次はマネージャーね」
ボーッと見惚れてしまっていた私は、先輩の呼びかけにハッとして立ち上がる。
「一年F組の新木夕菜です。第二中学出身で、中学の時も男バスマネージャーでした。バスケが大好きです、よろしくお願いします」
頭を下げると歓迎の拍手に包まれた。
そっと顔を上げたら皆がこちらを見ていた。
その中で彼も私を見上げて、意味ありげに目を細めた。
まさかここで会うなんて、そう言い出しそうな苦笑いを浮かべて――。
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