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「奈子ちんかー」
口々にみんな、緊張感が緩んだように笑い合う。 『奈子ちん』と呼ばれた彼女は、少し恥ずかしそうにしながら、頬にかかったポニーテールの髪をサッと耳にかけて、俺にお辞儀する。
「ありがとうございます」
「あ、いや……実はそれ、俺も持ってる」
カバンに付けてあるアクキーを、彼女の方に見せると、彼女の顔が綻んだ。
「え⁉︎嬉しいっ!実は女バスでは同じチームのブースターいないんです」
「……そうなの?いいチームなのに」
「ですよねー!」
すごく嬉しそうに笑う彼女。
俺より十センチは小柄で、少し見上げるようにこちらを見ている。
「奈子ちん、帰るよー」
「はーい!じゃあ、これ。ありがとうございました」
アクキーを持ってはにかんだ彼女は、ペコリとお辞儀をした後に、集団の中へと溶け込んでいった。
※ブースター:ファンの意味
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