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「ありがとうございます。男バス、なんですね」
はにかみながら彼女が微笑む。
「そう。一年、辻彰人」
「東条奈子です」
「私は高村真希だよ。そっか、男バスだったんだ。気づかなくてごめん」
背の高い高村がさっきまでの喧嘩腰を謝罪してきた。
「いや、気にしてねーよ」
本当はちょっと気にしている。
だって明らかに不審者扱いしたからな。
「ね、辻くんはポジションどこ?」
「中学ではポイントガードだったけど。うちの高校、ほかにポイントガードが上手な先輩も同級もいるし、スリーポイントに今は力入れてるから、シューティングガード目指してる」
「あ、私もシューティングガードなの。一緒だね」
「ちなみに私はセンターだよ」
高村の言葉に思わず頷く。
「だろうな。お前、背も高いけど迫力あるし、センター向いてそう」
「でしょ?ちょっとやそっとじゃ負ける気しないからねっ」
豪快に笑う高村に、俺もつられて笑う。
「ま、そうはいっても今はまだ一年だし。レギュラーには手が届かないんだけどね」
少し諦めがちに呟いた高村に、つい今まで笑っていた声がピタッとやんだ。
決して年功序列なわけじゃない。だけど今はまだ、先輩たちには到底追いつけない。
「でも!たとえ今はレギュラーになれなくても、いつかはなれるように頑張るもん。それに夏の地区優勝はチームとしての夢なんだから!」
茜色に染まる空の下、力強く宣言する彼女が輝いてみえる。
夕陽のせい?
意志の強さを宿す瞳が、まっすぐに俺をみる。
「そうだな。今、出来ることを精一杯やって。お互い地区優勝出来るように、頑張ろうな」
はじめて交わした約束。
この言葉を胸に、夏の大会に向けてひたすらに頑張り続けた。
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