25人が本棚に入れています
本棚に追加
昼休み、さっさと弁当を食べ終えた俺は、朝練の疲れもあって机に突っ伏しって昼寝の体勢にはいっていた。腹いっぱいになると眠くなるよなぁ。
教室の喧騒も少しずつ遠くなっていった頃、ぱこん、と頭になにかが当たった。
なんだ?せっかく本格的に眠りに入れそうだったのに。
無視してもう一回眠ろうと思ったところに、声がかかった。
「こら!無視するな」
耳に聞き心地のいい、よく通る声。
「……東条?」
顔をあげれば、ケラケラと笑う想像した人物がいた。
「なんで?あれ?お前、隣のクラス……」
「寝ぼけてんねー、辻。いつもより口がもたもたしてる」
ますます笑いながら、東条は空いていた前の席の椅子に座る。
「ごめん。状況がよくわからん。なんでお前いるの?」
その言葉に東条は「じゃーんっ」と言って、四角い台紙をみせてきた。
「色紙?」
「そう!先輩たちに応援メッセージ。女バス・男バスそれぞれお互いにも書こうってなったの。だから男バスの方、まわしておいてくれる?もちろんレギュラーの先輩には内緒だよ」
渡された色紙の真ん中には【目指せ!地区優勝!】カラフルなペンと字体で書かれている。
「大会前日に渡したいからさ。よろしくね」
それだけいうと、東条が席を立った。その瞬間、思わず手が伸びて東条の袖を、キュッと掴んでしまった。
「なに?」
振り返ってきょとんと聞かれると、思わず気まずさが全身を襲う。
「わり……寝ぼけた」
ごまかすように机に顔を隠して寝るふりをする。
「変な辻」
くすっと笑って「じゃあね」と教室から出ていく。
変で悪かったな。お前のせいだよ。
最初のコメントを投稿しよう!