よく考えてみる

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 三回目の8月8日。  夏休みの一週間が「ループ」している。  どうして?  わたし、何か悪いことしたっけ?  うーん……。  思い付かない。  普段と違うことといえば、今、わたしは田舎のお婆ちゃんの家に泊まりにきている……ということぐらい。  8月7日から里山にあるおばあちゃんの家に泊まりに来ていた。  大きな街から車で二時間、お父さんの運転する車で山の間をぬうように走り、田んぼと畑のなかに家々がポツポツみえる集落を抜ける。  右手には古びた社(やしろ)に苔むしたお地蔵さま。左手に傾いた赤い鳥居と神社。  すこし不思議な雰囲気の道を通りぬけると、やがて自然ゆたか村にたどりつく。周りは緑の濃い山々と田んぼだけが広がっている。  お店も徒歩十五分のところに一軒だけ。かんばんに『田中商店』という昭和の映画セットみたいな古い雑貨屋さんがあるだけ。  うん、すごい田舎。  鳥の声とセミの声、カエルの声がうるさい。  ここにはクラスメイトも知り合いも、友達もいない。  私だけの夏休み。  仲のいいクラスメイトと会えないのは少しさみしいけれど、もともとクラスに友だちが沢山いたわけじゃない。夏休みにどこで過ごそうとあまり変わらない。 「アオや、ラジオ体操にいくんけぇ?」  優しいなまり交じりのおばあちゃんはもう畑しごとからもどってきたところだ。 「うん、行ってくるね」 「気ぃつけや」 「だいじょうぶだよー」  だいじょうぶかというと、あまり大丈夫じゃない。  夏休みループで悩んでいるから。  おばあちゃんは日の出と共に起きて、朝から農作業をしている。  おじいちゃんが死んじゃって寂しそう。だからわたしは「昔ばなし」を絵に描いたようなこの山里の古い家に来て過ごしている。  のんびりして静かで、きれいな自然があって好き。  夜はホタルも見れる。  小学校にあがってから夏のあいだは毎年、ずっと来ているのだけど……。  こんなふうに夏休みがループしたのははじめて。  小学校五年生になるとループするものなの?  まさかね、そんなわけないか。  そうそう。  それと、おばあちゃんいわく「もののけ」が普通にいるらしい。  河童やザシキワラシ、それに人気のない場所には、人を惑わす怖いオバケみたいなものとか……。  実はわたしはちょっとだけ、そういう存在を感じられる。  「見える子」ってほどじゃないけど、あぁ何かいるなってわかる。  友達にはこんなこと言ってないけど。  でも何かがいればわかる。  自然いっぱいの里に来てから、あちこちに気配を感じている。  別に怖くはないけれど、不思議なものがいるんなって思う。  この「夏休みのループ」だって喜ぶべきか、慌てるべきか。 「どうしようもないか……」  正直、どうしようもない。  ジタバタしたってはじまらない。  顔を洗って髪を直して、身支度を整えて。  お気に入りの水色のワンピースをきて、素足にサンダルをつっかける。  わたしは日課のラジオ体操にいくことにした。  三回目の8月8日のラジオ体操へ。
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