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飲む、打つ……買う?
カラカラ…カタッ……
「のどか~来てるかぁ?」
「ここにいるよぉ、しげちゃん」
「コップ持って上、来い」
「はぁい、喜んで~」
「つまみは煎餅しかないぞ」
「もうしっかり食べたから問題なし」
私、有田和花29歳…が、カウンターに手を置き、軽い木製の椅子から降りた時には、カラカタッ…と年季の入った引き戸を開け放ったまま、しげちゃんこと茂森さん…たぶん72か73歳はもう外の階段を上がっていた。
「コップ、借りて行きますね」
「どうぞ、どうぞ~のんちゃんの飲み代はまた浮くかもしれないし、今はいいわ。いってらっしゃい。頑張ってっ!」
「ありがとう。いってきます!」
女将さんというよりは、食堂兼飲み屋の気のいいおばちゃんに手を振って向かった二階は、雀荘。
今日、私が来た時にカウンター内にいたおっちゃんが途中で消えたのは、二階へ行っているのだろう。
ここはおっちゃんとおばちゃんの城、一階飲み屋、二階雀荘、三階住居の「すずめ屋」
傾いていないかと、たまに遠目で確認しながら私はここへ通うこと7年近く。ここは全く変わらぬまま、いや…変わってきてはいるか。古びてきた箇所が目につくからね。
そして通ってくる面々も大きくは変わらぬまま、いや…平均年齢が年々、元気に右肩上がりで上昇している。
「こんばんは~お待たせいたしました!私は、どこ?」
「ここ、ここ」
「今日は和花をコテンパンにしてやらんとな、あははははははぁ」
「チョウさん、それならリベンジっていうんだぞ。な、のんちゃん?」
アハハ…みんなの声の大きさも年々右肩上がりだね。元気、元気…
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