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「カギ、テーブルに置くから…掛けてポストに落として……私、シャワーするから…その間に帰って」
失礼かな、と気遣う必要もない。気遣うつもりもない。
お風呂に向かう私の背中に
「和花、後悔してる?」
藤司の声が届く。
「後悔はしてないよ。大丈夫、気にしないで」
迷いなく応えて小さなバスルームへ…
「はぁ…?やってくれちゃってるよ…」
真っ赤な華が太もも…内ももに集中しているのに気づいてびっくりしたあとで、ため息が漏れる。
お酒のせいに出来るほど可愛い胃も肝臓も持ち合わせていない。ただ久しぶりに感じた熱に反応して、集中してしまうくらいのお年頃ってことにでもしておくか…
さっぱりした性格でお世辞もなく付き合えて楽だと言う男たちが、女らしくないと手のひらを返すことを私は知っている。その都度、私が心のどこかで想っている相手がいるからと考えたけれど、最近ではその相手を想ってもいない…淡い片思いはすっかり思い出になったと思う。
シャワーを済ませて、そっと部屋を覗くと…ちゃんと藤司は帰ったようだ。バスタオルを巻いただけで玄関に行くと、カギもあった。面倒な相手でなくて良かったよ。
カギを持って部屋に戻り、小さなテーブルにカギを置きながら散らかったままの部屋に安心する。万が一、洗濯物がまとめられていたりしたらドン引きだ。
喉がカラカラだ…水を続けて2杯飲んで、よし。終わり。
と、スッキリしていたのは私だけだったようだ……
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