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「あ、おいし…」
きな粉と米の中に、ゆるい缶詰めのあんこと違う、しっかりとしたおばあちゃんのあんこ…
「美味しいな、うん…手作りのおはぎって初めてかもしれない」
「よかったら持って帰って下さい。今日より明日はお米が少しかたくなるけど」
お母さんが藤司にそう言うと、彼はお茶を一口飲んでから
「ありがとうございます。今日は和花さんと一緒に暮らすことをお許し頂けるよう、お願いに来ました。将来的なことも考えて大切にお付き合いさせていただいています。こうして美味しい物をいただいて、それを一緒に食べたいと思う…そういう女性ですから、よろしくお願いします」
と頭を下げた。
これのために来たのだから特別緊張することもなかったけど、両親の返事は想像出来なかったので、私は二人をそっと見た。反対される気はしなかった。ただ何て言うのかな…と想像出来なかったのだ。
「和花の希望は?」
「藤司と一緒に暮らす」
お父さんに即答した私に、お母さんが被せるくらい素早く同意した。
「それがいいと思う」
許可の文言でもなく、お願いしますでもなく、オススメのニュアンスを感じることが少し意外で、私と藤司は同じような表情だっただろう。
「結婚するっていう話だったら、ちょっと待って…と言うつもりだったのよ」
「いずれ結婚はしますが、結婚には反対されているということでしょうか?」
「いえ、そういうつもりで言ってるのではないんです。ただ、一緒に生活しないと本当に結婚していいのか分からないんじゃないかと思っていて。同棲のススメってことではないけれど、和花に限ってはその方が安心かと思います」
あははっ…お母さん、私の生態を知った方がいいって言ってるんだね。さすが、よくお分かりで。
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