飲む、打つ……咲く?

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引っ越しで大変だったのは、不用品の処分だった。藤司が大活躍… そして、退去立会いにも藤司が大活躍だった。不動産屋さんからキズや汚れを指摘されて、修繕費を求められるのだが 「それはワザとではない、日常生活で出来たものの範囲ですから請求に当たらない」 「そこは経年劣化にともなうクロスの変色でしょうね。陽に焼けるのも当然ですし、それもオーナー側の負担になるはずのものですね」 と全部却下してくれたのだ。 「すっごく助かったよ。一緒に立会いしてもらってよかった」 「当然。義務じゃないから立会わない人もいるみたいだけど、そうなったらアレ全部請求されるんだ」 「ひどいね」 「ギリセーフっていう仕事のやり方のうちかな」 「なるほど…義務じゃないからと放っておくと良くないこともあるってことか…」 「そう。だから何でも、いろんな方面の知識はあるに越したことはない」 「雑学重要」 「そう。お客さんと喋っていると勝手に知識が増える」 「うん」 マンションのキッチンで、また1品ずつ作りながら口も動かす。 「和花もそうなるよ、きっと」 「そーか。私もお客さんのところへ行くんだ…新鮮な仕事だね。これまで事務員だったから…ん、出来た」 私が作ったのは、大きな豆腐になめ茸を乗せ、ラー油とごま油を少しずつ垂らしたあと、キッチンバサミでネギをチョキチョキ切って乗せたもの。 「豪華冷や奴だな。もうこっちも出来る」 「ありがと」 彼は鶏とキノコ類のバタぽん炒めを作ってくれた。この1品ずつスタイルも好き…頑張らなくていいのが定着する感じで好きだ。二人とも…ハハッ…キノコかぶりだね。それも楽しい。
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