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これまでの会社の帰り道という訳ではなくなったこともあって、すずめ屋通いは週2、3回に減った。行けば、卓を囲んで帰るので遅くなるんだけど、それでも普通に仕事をする私が武本先生は不思議で仕方ないらしい。
「酒がガソリン?」
「かもしれないです」
「昼間眠くない?」
「…ご飯のあとにそんな日もあるってくらいです」
「ショートスリーパー?」
「はい…」
「今、テキトーに返事したね?」
「分かってるなら静かにしてください…私はこの数字入力が…」
「テンキー使うの速いね」
「…………」
「わっ、もう無視キター」
「先生、今プリントアウトしたもの取って来てください。暇そうだから…あ、電話…はい、税理士法人三原総合事務所です…」
三原先生はお客さんのところへ行くことが多い。武本先生は法務局などに行くことが多い。武本先生はお客さんへ法的な説明をして帰ってくるけど、三原先生は中小企業の補助金の話から保険の話までして、どうしても世間話プラス相談か、相談プラス世間話になるから長い。
どうして知っているかというと、この事務所でのアポの時に話が聞こえるからだ。
「通帳見つかりましたか?良かったです」
“すまんかったね。ちょっといつもと違うところへ入れてしもてた。取りに来てもらえますかね?”
いやいや、それだけにはちょっと勘弁して下さい。
「9月20日以降、最新ページまでの写真を送ってもらえると助かります。他の書類は先に三原が頂いていますし、通帳のお預かりの必要はありませんので」
“ああ、写メと教えてもらったのを先生に送ればいいか?”
「はい、ありがとうございます」
写真をパソコンで送るということが出来ない人に、三原先生と武本先生は写メを送ってと教えている。何でも対面でしなくても大丈夫だと、お客さんに慣れてもらう努力をしないと体がいくつあっても足りないから。私もこういう対応にも慣れた。
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