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「武本先生、酒がガソリン?って言うんだよ?ちょっと失礼だよね?」
すずめ屋の二階でおっちゃん、しげちゃん、チョウさんと卓を囲んで、手も口も動かす。
「仲良くやってるってことで結構」
「それはそう」
「新婚らしいな、あの人」
「うん」
奥さんのご懐妊を昨日聞いたばかりだけど、私がここで言うことではないね。先日奥さんと会うことになっていたけれど、体調がよくないということで延期になっていて、昨日になって妊娠を聞いたんだ。武本先生がすっごく喜んで、どこかドヤっていることに藤司がウケていた。
「とーじとも仲良くやってんだろ?」
「うん」
「こりゃ、誰が仲人するかが問題だな」
「仲人?」
「のどかは心配せんでええ」
「しげちゃん、それもおかしい話だな。当人に…ハハハッ…」
「だが、チョウさん。今どき結婚を急かすのは、嫌われるジジイかババアと決まってるからな。絶対に急かすことはない」
「しげちゃんの寿命と競争か?」
「またおっちゃん、縁起でもないこと言って…」
話しながらコップに手を伸ばすことも忘れない私たちは、牌も一定のテンポで取っていく。
「もう迎えが来るか?」
「どーだろ」
藤司は夕方、まだ仕事をしていた。今日、私がここにいることは言ってある。お互いにわざわざスマホでメッセージなんてこともしないことが私にぴったりの彼だと思う、今日このごろ…ほら…適当なところで迎えに来てくれた。
「今日はチョウさんの勝ち。負けた」
「和花。そんな日もなかったら、遊んでもらえなくなるんじゃないか?」
「そーだねぇ」
「のどかは心配せんでも、いつでも相手してやる」
しげちゃんの言い方に藤司と顔を見合わせて、クスクスと笑った。今日も良い日だった…明日は藤司の両親が来る…
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