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「こんにちは。失礼します」
「ああ、のんちゃん。待ってたわよー。おとーさん、のんちゃん来たわよー」
いやいやいやいや…おばちゃん、わざわざ呼ばなくても…帳簿などの返却に来ただけですから。
「お疲れさん。昼、一緒に食べるだろ?」
まあ、こうなるんだけど…
「うん、ありがとう。先に、これいいですか?」
「はい、お願いします~のんちゃん先生」
「だから…おばちゃん…私はおつかいですって。えっと、この付箋の貼ってあるところだけ訂正で…うちの入力はもう正しい数字で入ってます。おばちゃん、合計の単純な計算ミスだね。他は問題なしで、三原先生から“帳簿上級者”とのお言葉を預かりました」
「うっれし…この歳になって年々ちゃんと出来るようになったのは、最初にお願いした時に、三原先生が本当に無理なく教えてくれたおかげなのよね。そこから徐々に自分で完成させられるようになったんだもの」
すずめ屋で帳簿を預かるのは三原先生だ。その時に気になることがないかを聞いているから。そして返却は誰でもいいから、以前は南田先生か武本先生だったのが、おっちゃんとおばちゃんの指名で私の仕事になった。しかも、13時指定でお昼ご飯付きという仕事。二人のお昼ご飯の時間に合わせてってことだ。
「今日は焼き肉定食だ」
「残り物の豚だけどね」
二人が仲良く用意してくれたのは、炒めた豚肉をおっちゃん特製ダレに漬ける。そして野菜を炒めて、豚肉をタレごと野菜炒めに戻す、特製野菜炒めみたいなもの。
「今、誰が留守番してるんだ?とーじか?」
「ううん、武本先生。もしかしたら奥さんが赤ちゃん連れて来てるかも」
「散歩にいい時期で、いい時間だものね」
「うん」
美味しくいただきながらコクコクと頷く。武本先生の家は事務所に近い。そして奥さんが気分転換に赤ちゃんと事務所を覗くことがある。10分とか15分くらいで帰るんだけど、赤ちゃんと1対1で過ごす時間のインターバルが必要な時があるらしい。
「赤ちゃんが…見るたびに武本先生に似てるの。可愛いチビ武本センセ…フフッ…」
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