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藤司は残っていた白菜をサバ缶とトロッと煮てくれた。
「藤司最高。いただきますっ」
「乾杯くらいしようか、和花」
クスクス笑う藤司がビールのグラスを持って言うので、慌てて私もスプーンを置いてグラスを持つ。
「合格おめでとう」
「ありがとう。プロポーズ成功おめでとう」
「ありがとう。乾杯」
「かんぱーい」
この数日後の三原先生と武本先生の仕事の都合がいい日、武本先生夫妻が赤ちゃんを連れても参加しやすいように17時から、すずめ屋でお祝い宴会が始まった。
「武本先生、飲み屋のうちにあるよりいい酒を持って来たら困るって」
と、おっちゃんが上機嫌で一升瓶を眺めている。
「アリちゃんファンの顧客が酒屋なんで、幻の酒を購入出来たんですよ」
「ああ…とーじ何だった?きなし商会だったか…」
「きおか商店です。何年か前に一度すずめ屋さんに紹介した時には、あちらが強気だったのかちょっと仕入れ値が合わなかったんですよね。でも最近、腰の低い商売をされてますよ」
「のんちゃんファンなの?うちと一緒ね」
「お前、馬鹿言うなよ。うちはファンなんてもんじゃないだろ?何年も大事に育てて、やっと嫁に行かせるってのに一緒にするな」
「そうね、そうそう。のんちゃんの気が向いたら、また一度うちにお酒を入れる相談をしてみるように、そのきおか商店さんに言ってみて」
「はい、気が向いたら言っておきます」
そう応えながら、私は武本先生の赤ちゃん、奏多くんがチョウさんに抱かれているのを見ていた。
「けっこー様になってる…」
「うちの父より安心の手つきだわ」
奥さんの聡美さんがゆっくりと串揚げを食べながら笑っている。0歳の奏多くんから74歳のしげちゃんまで…私はこういう空間が大好きだ。
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