緩く、食う寝る…会う?

2/9

4048人が本棚に入れています
本棚に追加
/120ページ
ここの緩い食事もいつものことで、うちの家族は全員ちょっと緩いのが標準なのだと思う。 お母さんも座るから、今日のご飯はこんなものかと思いつつ食べ始めても、途中でピッピッ…とレンジが鳴ってお母さんが立って、ホイル焼きの登場。 「ごちそうだねぇ」 冷凍ボイルホタテ、ベーコン、アスパラ、ミニトマトのホイル焼きをお母さんが開けてくれる隣で、今度はお父さんが立って 「冷や奴、食べる人〜いるかぁ?」 と聞いてくる。要するに…最初から整った食卓とは無縁、誰かがポツポツと立つのが普通なんだ。 「テツ、忙しい?」 「まあまあ。週2くらいで残業してる」 「まあまあだね」 「今度TOEIC、強制受験の刑」 「ああ、定期的にあるんだね」 「迷うなぁ…」 「わかる」 「何が“迷う”に“わかる”よ。普通に受けたらいいでしょ?」 お母さんはそう言うけどテツ…弟の哲也は海外赴任がイヤなんだよ。勉強は出来てしまうから、TOEICの点数をそこそこ止まりにしたいけど、査定や昇進に響くからどうしようかと迷っているのだ。 「海外赴任の一番近くにいる、独身社員だよね」 「そう。それで兄ちゃんも行っただろ?結婚するか…」 「誰と?」 「誰としようかな…」 「あははっ…選べるように聞こえるけど、探すところから?」 「のんちゃんもだろ?」 「私は願望がないもの」 「どこか頼りない二人の会話だな」 そう言うお父さんは笑っているが、お母さんは呆れ顔だ。 「隣のケンちゃんは帰って来たのよ。異動だって」 隣のケンちゃん…兄の同級生で私たちの幼なじみ。そして私が長年淡い片思いをしていた相手だ。
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4048人が本棚に入れています
本棚に追加