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ビール→焼酎→日本酒→味噌汁…実家ではこの一杯ずつが決まっているから、準休肝日に当たる夜だ。しかも普段より早めに寝るという健康的な日。おじいちゃんが与えてくれたのかもしれない、と毎回布団の中で思う。
今夜もうとうとしながら、おじいちゃんが連れて行ってくれた丘の公園とか、サイクリングとか…近くばかりだけれどおにぎりを持って行くようなお出かけを二人でしたことを思い出す。ラップで包んだおにぎりに小さなかたい丸干しがついてたこともあったな…と思い出したところで意識が沈んだ。
「おはよ……おばあちゃん、いるかな?」
「いるんじゃない?おはよう」
「ちょっと行ってくる」
「ご飯は?」
「何かあるでしょ…」
珈琲を入れようか?お菓子もあるよ…ってなるに決まってるからね。
「これ、持ってって」
「うん」
お母さんは少し面倒に思いつつもおばあちゃんのことを気にはしてるから、これだ。玉ねぎが2個とバナナ2本と昨日のひじき煮。
ぷらぷらと歩いて10分くらいでおばあちゃんが住む家に着くと、バナナをお仏壇に供えて手を合わせた。
「いま帰って来たのか?」
「昨日の夕方」
「そうか。コーヒーも…何でもあるよ、のんちゃん」
何でもと適当に言うおばあちゃんの隣の冷蔵庫を開けて
「これにする」
アイスコーヒーと牛乳を出すと
「カステラにするか」
と勝手に話が前進した。そして、以前なら私に一人暮らしのことを聞いたりしたのに、いまは自分の話を永遠にするおばあちゃんに1時間ちょっと付き合って、ボケてはいないことと、生活に困っていないことを確認するとまたぷらぷらと実家に戻る。
「「あ…」」
隣の家の前で、ケンちゃんと私は同じくらいに口を開けて一瞬だけ固まった。
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