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「「おかえり」」
声が揃ったところで、あははっといつもの調子が戻る。
「ただいま、おはよ」
「おかえりって…手ぶらだからばあちゃんちか?」
「うん。ケンちゃん、戻ったって昨日お母さんから聞いた。ここに住んでるの?」
「そうなんだよなぁ。今さら同居も、どうしようかとは考えてるけど、内示から辞令がすぐだったから準備期間がなかった」
「そっか」
ケンちゃんは3年くらいぶりに戻ったのだと思う。
「俊也もあっちで元気そうだな」
「知らない」
「ハハッ…いつから連絡してない?」
「………記憶が呼び起こせないくらい前。でも誰か経由で…うん、大丈夫」
俊也はお兄ちゃん。お兄ちゃんも私も、お互い、お母さんか誰か経由で元気だと知ってるからいい。
ちなみにケンちゃんは、米住健。
「和花は変わらないな」
「そう?」
変わってるよ。もうケンちゃんは、隣のケンちゃんに戻ってるもの。私のケンちゃん遍歴は大きく一周、円を描いて元の幼なじみ。
高校生の時にふたつ上のお兄ちゃんからたまたま聞いたケンちゃんが好きな女の子は、私と正反対の女の子だった。とても流行に敏感なお洒落さんで、お菓子作りが得意な女の子。そんでもって、とても少食で、よく学校を休む子。
ケンちゃんとその女の子は中学、高校時代、頻繁にメッセージなどのやり取りはしていたけれど付き合ってはいなかったというのが、お兄ちゃんの話だった。
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