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「今日戻るのか?」
「うん。お昼食べたら帰る」
「変わらない和花が、大人だな。あっちを“帰る”って言うんだもんな」
「ああ…どっちも帰るって言ってるかも」
二人で笑っているのはよく知った心地よさで、数少ない友人や家族と過ごす時とよく似たフラットな気分だ。
「送ろうか?」
「いいよ、大丈夫」
「午後、雨予報だぞ」
「えぇ…」
「見てないんだろ?」
「バレてる…時間がはっきりしないからいいや」
休日は緩くと決まっている。緩く過ごすから休日なんだ。
だから時間を決めずに起きて、おばあちゃんのところに行くことも起きてから決めて、お昼を食べたってすぐに帰るか、ゴロゴロするか分からない。まあ、仕事以外の時間は平日でも緩いんだけど。これでは彼氏どころでないと自覚しているから、昨夜の願望がないっていう発言になるわけだ。
「じゃあ、和花が帰る時に降ってたら電話して。送るから」
ポンと軽く私の頭に手を軽く置いたケンちゃんが、ガレージの奥へ行って物置をガタガタと開けたのを聞きながら、家に帰る。今日はケンちゃんも家にいる日なのか…
そして、遅いお昼を食べてる途中に音を立てて雨が降り始めた。
「暗っ…」
すごく遠くでゴロゴロと雷が鳴っている。テツが車で出てるから、両親に駅までとも頼めない。
「泊まってって、明日の始発で帰れば?」
「絶対に嫌なパターンだよ。月曜から無理していいことないに決まってるもん。ケンちゃんにお願いする」
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