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「いないね。残念ながら心配無用ってこと。和花は?俺が家まで送っても大丈夫か?」
「同じく心配無用…なかなかのアラサーチームだね」
「俊也が一抜けだな」
「たぶんだよね」
「なんで、たぶん?赴任が終わったら結婚するだろ?」
「テツが電撃婚とか?」
「ありそうか?」
「全く」
また普通に続く会話を中断しない程度に、時々キョロキョロと雷の行方を確かめる私。
「近づいてはないな、良かったな」
「うん、後方左斜め45度に光ってはいる」
後方斜め45度…とリピートしながら笑うケンちゃんに
「美南ちゃん…どうしてるんだろう」
と言ってみた。深い意味はない。ただお兄ちゃんやケンちゃんが31ってことは、美南ちゃんも同い年なわけで…共通の知り合いの話題ってこと。ただそれだけ。
「さあ?」
「ふーん」
「和花、ずっと転職せず、部屋も変わらずか?」
「うん。経理部内の異動はあったけど」
「今は何やってる?」
「給与保険管理計算業務担当。給与関係はね、社内結婚した人は異動時期に関係なく外されるんだよね。だから変な時期にいきなり変わったけど、そのあと不動」
少し仕事の話をしてから、大粒の雨が小粒になったとき
「俺さ…後悔してるんだよな…10年以上経って今さら…」
ケンちゃんが前を見たまま言った。
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