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「昨日来とらんかったな」
「うん。昨日はおうちで大人しく休肝日。洗濯物がたまってたから、洗濯乾燥機を2回も回したよ」
「そりゃ、今日の酒はうまいな。ほれ」
「わ、ズルズル…」
「口から迎えに行くの、好きだろ?」
「チョウさん、よくご存じで」
雀卓を囲む椅子の方が、下の椅子よりも座り心地がいい。私はそこから横に身を乗り出し
「花金だ」
と誰かが言っているのを聞きながら、こぼれそうな日本酒をすすると
「これ、誰のお酒?ありがとう。いただいてます」
と同じ卓を囲む、しげちゃんとチョウさん、そしておっちゃんを見た。
「チョウさん」
「ありがと、チョウさん」
「いいってことよ」
チョウさんこと西田長二…西川だったかもしれないけど、長二さんなのは確かだ。先月ここで古希をお祝いした。その日は奥さんも来ていて、いつも酔わないチョウさんが酔って可愛かったんだ。
「アリアリでいいな?」
「はい、OKでーす」
とおっちゃんにルール了承の返事をした時、後ろの卓がわっと一瞬盛り上がったからチラッと見た。
「三麻でも楽しんでるね」
「ワシは四麻しかせんから、のどかを呼びに行った」
「ありがとうね」
「階段を余分に上がったわ」
「アハッ、お疲れ様でした。飲んで、飲んで、しげちゃん。チョウさんのだけどね」
これが日常的…たまった洗濯物、お酒と麻雀。そして淡く片想い中…かもってくらい、淡く…淡いのか、もうどうでもいいのかってくらいの緩い気持ち。たぶんもう終わっている。
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