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「ごめんな、誘っておいて遅くなった」
また送ってくれるという藤司と、サッと降った雨で濡れた道を歩く。水たまりが出来るほどでない濡れ方のアスファルトが外灯に煌めいて、昼間よりキレイに見える。
「相手のある仕事だもの。時間読めないこと、あるよね」
「いや…そうなんだけど、仕事を切り上げるよりプライベートの時間をカットした自分に憤慨してる」
「あははっ…憤慨って、もしかして藤司…“仕事か私のどっちが大切なのっ?”って言われたことある人?」
「ない」
「ないのに憤慨?しかも時間の約束はなかったし、付き合ってもないし…」
「ああぁぁ…和花…」
憤慨の次は何?
「好き」
「………ごめんね…今のタイミングとか、ポイントが全く分からない」
「手、繋がせて」
と言いながら、勝手に手を繋いだ藤司は
「ツンなんだろうけど、めちゃくちゃ可愛いっていうか…裏表がないのが、まず第一に好き」
「はぁ…?」
「淡々とした声の中に、微妙な気持ちが乗ってるところも、すごく好き」
「………へぇ…」
聞いても理解出来ないことを言った。
「真面目な告白だから。この前の夜も、好きだから抱いた」
「………抱いたの?」
「今も全てを思い出せるくらい意思を持って、抱いた」
気持ちいいくらい言い切るんだ。
「買われたんじゃなかったの?」
私がそう言うと、チュッ…チュッ…二度キスが降ってきた…
「和花。買うとか買われるとか、勝った負けたって、外で言っちゃダメだよ。どこから今日みたいなことが起こるのか分からない」
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