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悪い男だ…本当に帰って行ったよ。
私はお風呂へ直行して、勢いよくシャワーを浴びる。
すずめ屋、大丈夫かな…お客さん減るのかな…
警察官とあんな風に話をしたのは初めてだったし、調べを受けたのも初めて。職務質問だってされたことないし…藤司のせいだけでなく、初めてのことが思い出されてちょっと落ち着かない気分ではある。
だって、冷静に思い返すと、あの空間に制服の警官2人っておかしな光景だよね。
藤司の咲かせた華がほとんど消えた太ももを洗い、つま先まで洗って……藤司は警官が来るのを知っていて、すずめ屋に来なかった?雀卓に座ることを避けた?と、ふと考える。
そんなわけないか。
私が一緒に卓を囲むのは、しげちゃん、チョウさんだけではない。両親ほどの年齢のおじさんやおばさんと一緒になることもあるし…ああ、長居する人が多いからなぁ。誰かの家族が困って通報した?
やっぱり分からないや。
シャワーを終えてバスタオルだけで部屋に戻ると、ケンちゃんからメッセージでなく写真が送られてきてた。
「あ、丘の公園から…かな…」
おじいちゃんとよく行った、丘の公園から私たちの街を見下ろす景色。
“ありがとう”
警官で落ち着かない気持ちは、懐かしい写真で消えていく。
「グッドタイミングだったね」
と穏やかに眠ったのだが、事件はこのあとだった。今日のすずめ屋なんて事件じゃない。
「有田さん、あなた違法な賭け事をしているのですか?」
会社で話をしたこともないような役員に呼び出されて、これは……大事件レベルだよ。どうなってるの?
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