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「その前に…」
私もお箸を置いて、真っ向勝負を選ぶ。
「私、全てを知ってる人が藤司しか思い浮かばなかったから電話したの」
「うん。俺も俺しか浮かばないわ。スマホも、仕事のパソコンも持ってるけど?見る?」
「見ない。藤司は無関係?」
「すずめ屋に出入りしてることと、和花を好きってことで無関係ではない。無関係な人間に認定しないで。そこのところは絶対に頼むよ?」
あぁ…私はこういう人が好きかも。
自分が疑われた時に“俺(私)、関係ない。関係ない。なーんにも知らないし”と首をぶんぶん振る人よりもいい。
「そーゆー人間は好き…疲れた…」
何だか急に脱力感を感じてパタッと寝転ぶ。一人用の極小テーブルはあるけれど、今はカーペットの上で良かった。
「和花」
藤司が私を抱き起こすようにして、自分のあぐらの上で横に抱く。
「疲れたよな。ひどい日、ひどい話だ」
そうなの…
「会社で噂になってるんだろうな…」
「従業員が多い会社だからな。誰が何を想像で噂にしたか分からなくなるよな」
「うん…話だけが独り歩きする。明日、私がいないとコソコソでもなく、ビューって広がる」
「うん」
「月曜…どんな顔して行けって言うのよ、ね?真面目に頑張って……仕事はちゃんと…頑張ってきた……のに……」
不意に溢れる涙を我慢することも、隠すことも出来なかった。
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