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でれっとくたびれたTシャツのお腹を引っ張り上げて涙を拭く…あ…いつものクセでやってしまった。お腹丸だしじゃないか…
「和花、思い出せる?」
藤司は何も気にせず、私の前髪を片手で整えながら話す。
「先週の金曜日、隣の卓にいた客を思い出せる?」
うーむ…藤司と一緒にやった時だね…あのあとは昨日しか行ってないから思い出せるはず……
「あ、うん。知ってる人たち」
「誰?」
「まあまあ近所の人たち。夫婦二組の4人。下で飲み食いしないで、家で夕食を済ませて遊びに来る人」
「別に怪しくないか…犯人捜しは、しばらく俺に預けてくれる?和花に心当たりがないなら、俺が調べてみるよ」
「うん…犯人捜しって嫌な響きだけど……コソコソされるのはもっと嫌だから」
「そうだよな」
「藤司は誰かに私のことを話してないんだよね?」
「してないな。彼女になってくれたら話まくるけど、会社とかは言わないと思う」
「………話まくる…何を言うんだ…」
ちょっと背中が痛くなりそうで起き上がろうとする私を手伝った彼は
「裏表のない、真っすぐな、最高に可愛い彼女が出来たんだ…ってあちこちで言う」
と言ってから
「大丈夫?無理してないか?」
すっかり止まった涙のあとを指先でなぞった。
「…エロい手つきはやめて」
「ハハッ…そうかな?和花のラベンダーに極細黒リボンブラに比べるとエロくない」
「……自分のガサツさが隠しきれず………見たなぁ?しかも詳細に…」
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