好き…嫌い?

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今日の電話がケンちゃんで良かった。 もしもこれがお父さんかお母さんだったら、こんなに落ち着いて話せないと思う。ケンちゃんは深刻に受け取ってはいたけれど、大袈裟な声を出すわけでなく、とても落ち着いていたから、私もムキになって“大丈夫だから放っておいてっ”とはならない。 “危ない事でないなら1週間、和花が頑張れる?” 「うん」 “聞いてないから、例えばだけど…” 彼はちょっと考えてから “例えば、仕事で重大な失敗をしたとか、嫌みなお局にイジメられるだとか…派閥争いに巻き込まれるとか、友達に今になってハブられるとか………頑張れる?とは聞いたけど、頑張らないで逃げてもいいからな” と言った。 「そうなの?」 “別に嫌なこと、頑張らなくてもいいだろ。今まで一人暮らししながら、しっかり働くっていうことを成し遂げたんだからよくないか?” 「そう考えると気が楽かも……」 “良かった。そこが重要。眠れそう?” 「バッチリ眠れそう。ありがとう、ケンちゃん」 気がつけば、さらに1時間ほど話をしていて、私は少しスッキリした気分でお風呂に入る。でも… 逃げてもいいのか…負けた気分にはなるよね…と考えると、湯気の中の敵を睨むくらい腹立たしくなった。
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