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研修内容は細かくて、確かにある程度の時間がかかるものだった。
コールセンターと聞くとクレーム対応のイメージが強いが、単純に返品可能かどうか。可能ならその手順の説明…とか、そういうことも含めての対応だ。
全てを暗記しなくても、質問を手元で入力すれば答えはチャット機能で画面に出る。その手順まではいいのだが、その機能ではカバー出来ない部分の対応が重要になる。
周りの人たちはヘッドセットをつけて、淡々と画面に向かって喋っている。数人の人がいるけれど、何だか無機質な空間に感じて肌に合わないな…
「お疲れ様です、有田さんね?」
午後になって、もう一人の社員である宮根さんが私のところまで来た。
「大丈夫?」
「はい、何とか進めています」
「そうじゃなくって、すごく有田さんの異動が噂になってるから」
あぁ…業務でなく噂…全然“大丈夫?”って感じではなく、何か情報を仕入れて噂にしてやるわ…的なギラギラを感じるのは気のせいか?
「私には聞こえてきていないので…なんとも言えないです」
「そっか、そうだよね。聞こえていないのがいいのか、悪いのかは分からないけれど、まあまあ知らない方が平和かな?」
今の“かな?”は完全にからかってますね…
「水谷主任が給料のことを言ってたので、何となくは分かりますけど」
「あ、そうだよね。給料って有田さんも担当だったらしいね。そりゃ、誰もはっきりと人の給料を口外しないけど、勤続年数とかからある程度みんな知ってるでしょ?辞めたあとにペラペラ喋る人とか、過去にはいたし、およそは分かるよね。そこは憶測に推測が乗っかって伝染してる…で、経理で何をちょろまかしたの?」
「はぁっ?」
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