好き…嫌い?

13/18

4017人が本棚に入れています
本棚に追加
/120ページ
「大きな声を出さないで」 宮根さんが言うのと、両隣のデスクから視線を浴びるのは同時だった。 「ちょろまかすって何のことですか?そんなことしていません」 「そうなの?まあ、ちょろまかしてたら懲戒ものよね。そうじゃないんだから、分かっていて皆が面白可笑しく噂してるのかな?資材課ならこんな噂にならないだろうけど、経理部っていうことがねぇ…お金っていうイメージがついて回るのよねぇ。安心して。ちょろまかしてませんって有田さんが言ってたって、噂の否定はしてあげるわ」 そう言って去って行く宮根さんのお尻が、やけに横にクイクイ動くのを見ながら、私は足がカクカク震える感覚に襲われた。 そのあとの研修内容は頭に入って来なかった。そして退勤時間に人と会うのを避けてトイレに籠もったところに、誰かが来たようだ。個室に入る様子がないから、電車に乗る前の化粧直しだろうか…トイレがキレイで幸いだよ、と私は便器の蓋にそっと座った。 「今日から来た社員って、何かしたって?」 「よく知らないけど、何かしたからってコールセンターへっていうのもコールセンターが馬鹿にされてる気がする」 「フフッ、まあうちらは派遣だからいいじゃん」 今までなら声で誰か分かったけど、ここでは誰か知らない二人だ。分かるのはコールセンターの派遣社員ということだけ。 「経理部って聞こえたから着服とか横領?」 「ありがちー。で、男に貢ぐ」 「それだね」 そんなわけないでしょ?それって犯罪だからね。でも…自分に関係のないどうでもいいことを、人はこんな風に話すんだ…と現実を突き付けられた…
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4017人が本棚に入れています
本棚に追加