4012人が本棚に入れています
本棚に追加
/120ページ
“ちょっとくらいのんに加勢してやらないと、お前、テツに先越されるぞ”
「はぁ?この前“誰としよっかな?”って言ってたけど?」
“たぶんいる”
「たぶん…だけどお兄ちゃんが言うなら、たぶん絶対にいるね…テツのおとぼけに騙された。願望なしまで宣言したよ」
“願望なくても、こうして腹割って話せて寄り掛かれる相手が欲しいこともあると思う。家族以外にな”
お兄ちゃん……今、まさにそれです。
「さすが、結婚決めてる人は一味違うね。心に留めておく」
“そうしろ。結婚したけりゃ、のんは顔はいいんだからダラダラを隠しておけば、ころっと2、3人…”
「はははっ…2、3人…めんど」
“だな。とにかく健闘を祈る”
「ありがとーお兄ちゃん、大好き!」
“すげーリップサービス…怖っ。お土産考えておく”
お兄ちゃんの言った、健闘を祈る…は、彼氏とか結婚とかのことだけど、明日何かに対峙する私へのエールに聞こえた。
それにしても…テツは“のんちゃんもだろ?”とか言って、なんという弟だ。
そしてケンちゃん…美南ちゃんを諦めて、ちょうど私がいた…そうなのかな。お兄ちゃんが言うなら、たぶん絶対にそうなんだよね。滅多に人のこと言わないし、口出しはしないけど、言う時にはお兄ちゃんが確信を持ったことを言うんだ。
それでも今回、ケンちゃんがちょっぴり逃げ場を与えてくれたことは、仲のいい幼なじみで良かったと思える。今度ケンちゃんには、私には好きな人がいる、と伝えよう。
うん?好きな人?
自問自答する私は、秒単位で奔走する藤司を思い浮かべていた。
最初のコメントを投稿しよう!