決着、未来…酒?

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スマホでマップを見るほど駅から遠くない藤司の事務所を目指して歩くと 「あ、藤司」 「和花」 事務所ビルの前で待っていてくれた藤司が私に駆け寄ると、私の腕をぐいっと引っ張ってギューーーッと抱きしめた。 「一緒にいてやれなくて、ごめん。ゆっくりと話を聞くことも出来なくて、ごめんな。きつかっただろ…もう大丈夫だから」 「うん」 「和花の好きにしていいからな」 「煽ってるね」 「バレてる」 「当たって砕けたら、拾い集めてくれる?」 「喜んで」 「じゃあいいや。行こう」 チュッ…藤司は私の頭にキスを落としてから、先にビルの階段を上がる。2階に4部屋あるようで 「ここ」 藤司は“税理士法人三原総合事務所”と書かれたドアを勢いよく開けた。なんで、その勢い?と思いながら 「失礼します」 と彼に続くと 「いらっしゃい、こんにちは」 メガネをかけた男性が牛乳パックを持ったまま応えてくれた。 「有田和花さんだよね。僕は司法書士の武本です」 「あ、おばちゃんの…」 「そうそう」 私の呟きを拾った藤司が頷きながら、4人がけの応接セットに私と藤司が並んで座るように促す。 「南田さん、始めよう」 武本先生がそう言いながら私の向かいに座り、彼の隣におっちゃんがファンだというのも納得の美人が座った。 「うん…?私はこの事務所の方の面接でも受けるの?」 「ははっ、そんな感じだけど…和花、警察に通報したのも、和花の会社へメールを送ったのも、この南田」 「………全く接点なしの、面識ない相手なんだけど?」
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