4018人が本棚に入れています
本棚に追加
/120ページ
「先生、打てる？」
オレンジを手にしたおっちゃんがカウンターの中から端っこを見たので、しげちゃんと私もそっちを見た。
先生…ああ、先生ね。って、私は話をしたことないけれど。
話をしたことがないのは常連さんではないからで、先生っていうのは税理士さん。このすずめ屋がお世話になってるらしく、数回見たことがある。
「すずめ屋さんで“打てる”なんて言うのが恥ずかしいくらい…やり方は知ってるってとこです」
「よし、先生を入れて四麻」
しげちゃん…それって、しげちゃんと私とおっちゃんと先生？
ここ数年、お酒ありお喋りありで、半荘40～45分という快適なペースが出来てるのが、先生のペースによって読めないな。
まあいいけれど…金曜日だし。
「のんちゃん、年寄りばかりの相手だったのが、急にイケメン先生相手だねぇ。酒の臭いさせてる場合じゃないよ。アハハハッ…」
「おばちゃん、ガーリックステーキまで美味しく食べたよ。っていうか、しげちゃんコップ持って行くよね？」
「当たり前だ。ここで飲まない奴はおらん。先生もコップな」
「はい、お手柔らかにお願いします」
そんなこと言いながら“頭がよくって、何でも出来ちゃうんじゃないの？”とこちらに思わせるほど、なんだか整っている人だな。
おっちゃんが皮ごと切ってくれた、オレンジの汁を口内と指先に感じながら、おいし…ビタミンを欲してると感じるなんて今週は仕事がハード過ぎて疲れてるな…と自覚する。今夜は早めに切り上げて帰らないと…
最初のコメントを投稿しよう！