4026人が本棚に入れています
本棚に追加
/120ページ
「買ってません」
ここははっきりとさせなきゃならない。
「賭け麻雀もしていません」
ここもはっきりとさせなきゃならない。
「あら?勝ったら何々っていうのは賭けでしょ?」
「藤司、パス」
「オッケー。飲食を賭けてもそれは“一時の娯楽に供するもの”だから、違法ではなく賭博罪にはあたらない。だな」
それを言いたかったけど、藤司のように簡潔で適切な説明が無理だと思ったからパスした。
「そーゆーことですから、賭博ではないです」
「じゃあ、あなたが三原くんを買ったのは、一時の娯楽に供するものと言うのね?」
「それ…“買う”っていうのが根本的に間違ってますけどね。私が連勝、圧勝したことからおっちゃんたちが悪ノリして言っただけだもの。自分で見てもいないことから、見知らぬ人間を攻撃した理由を教えてください」
「僕もそこは聞きたいね。そこは南田さんが正直に説明すべきところだよ」
牛乳パックのストローを口から放した武本先生が口を開く。
「まず…」
南田さんは、ここでタメを作る。今から論破するわよ、とかそういう気配だね。散ったら…と藤司に言ったけど、こんなくだらない事に巻き込まれて、私だって絶対に負けないんだから。
「私は賭け事が嫌い。父のそれで母の苦労を見てきたから」
「「だからって…」」
私と藤司の声が揃って顔を見合わせると、武本先生が
「お父さんのことと、すずめ屋のことは全くの無関係だよね。それは理由にならない。他は?“まず”って言ったんだから、はい、次」
素晴らしく中立的なトーンで話を次に進めた。
最初のコメントを投稿しよう!