4021人が本棚に入れています
本棚に追加
/120ページ
「先生、そんな上品にやってどうするんだ。洗牌の音は縁起がいいんだから、思いきりじゃらじゃら音を立てんとな」
ふふっ…ハハッ…
「なんだ、のどか?」
「しげちゃん、私にも同じこと言ってたなって思い出し笑い」
「基本だ、基本。先生はどのペースか知らんが、ワシら飲みながらずっと喋っとるからゆっくりだぞ。時々30分ってとこ」
「だね、だいたい40分かかってる。お煎餅ポリポリ食べたりしてるから…先生ってお名前聞いてもいいですか?先生のままで良かったらいいけど、卓を囲んで“先生”ってヤじゃない?」
壁牌を作りながら聞いてみると
「イヤですね」
「ですよね」
「三原藤司。ここでは敬語もなしで。のどかって名前?どう書くの?」
「和む花」
「のどかにピッタリだろ?」
「ははっ、すずめ屋さんが自慢げ?」
「おう、自慢だ、自慢。うちの看板娘」
「アハハッ…飲んでばっかのね」
「勝ったらまたごちそうしてやる」
「ありがとう、頑張りま〜す」
と緩く4人で喋る。ここまではいつもと変わらなかったし、一局が終わるペースも変わらなかった。
でも私が連勝して、早めに帰ると切り上げた時、いつもと違うことが起こったのだ。
「完敗だな…すずめ屋さんが今日の和花の食事を奢って、しげちゃんがこの酒を奢る…俺はどうしようか?」
「そりゃ、とーじ。お前は若いんだから、のどかに買われちまえ。負けを認めて潔く!だ」
「そうですね」
はっ?飼う?買う?疲れを自覚しつつ、いつも通り飲んだのが悪かったのか…幻聴?
最初のコメントを投稿しよう!