飲む、打つ……買う?

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「先生、そんな上品にやってどうするんだ。洗牌(シーパイ)の音は縁起がいいんだから、思いきりじゃらじゃら音を立てんとな」 ふふっ…ハハッ… 「なんだ、のどか?」 「しげちゃん、私にも同じこと言ってたなって思い出し笑い」 「基本だ、基本。先生はどのペースか知らんが、ワシら飲みながらずっと喋っとるからゆっくりだぞ。時々30分ってとこ」 「だね、だいたい40分かかってる。お煎餅ポリポリ食べたりしてるから…先生ってお名前聞いてもいいですか?先生のままで良かったらいいけど、卓を囲んで“先生”ってヤじゃない?」 壁牌(ピーパイ)を作りながら聞いてみると 「イヤですね」 「ですよね」 「三原藤司(みはらとうじ)。ここでは敬語もなしで。のどかって名前?どう書くの?」 「和む花」 「のどかにピッタリだろ?」 「ははっ、すずめ屋さんが自慢げ?」 「おう、自慢だ、自慢。うちの看板娘」 「アハハッ…飲んでばっかのね」 「勝ったらまたごちそうしてやる」 「ありがとう、頑張りま〜す」 と緩く4人で喋る。ここまではいつもと変わらなかったし、一局が終わるペースも変わらなかった。 でも私が連勝して、早めに帰ると切り上げた時、いつもと違うことが起こったのだ。 「完敗だな…すずめ屋さんが今日の和花の食事を奢って、しげちゃんがこの酒を奢る…俺はどうしようか?」 「そりゃ、とーじ。お前は若いんだから、のどかに買われちまえ。負けを認めて潔く!だ」 「そうですね」 はっ?飼う?買う?疲れを自覚しつつ、いつも通り飲んだのが悪かったのか…幻聴?
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