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「藤司、大丈夫?」
武本先生が、事務所を閉めて帰るから私と藤司にはすずめ屋へ説明に行けと言ってから
「すずめ屋も大事な顧客だから」
と言うことに、彼らの仕事への向き合い方が見えた。そして武本先生は
「三原くん、ほとんど寝てないから酒は飲ませないで」
と私に言ったんだ。
「大丈夫。和花のダメージを考えたらどうってことない」
「ありがとう、しか言えないけど…本当に助けてもらってありがとう」
「十分。それに、うちは客が客を紹介してくれているパターンが多いんだよ。だからいい加減なことは絶対に出来ない」
「紹介してくれた人の信用にも関わるんだね」
「そう。だから、南田が急に辞めて“えっ?三原んとこって大丈夫なのか?”とは絶対になってはいけない」
「うん」
「それもあって、南田がよくやり取りしていた顧客に根回ししたり…元々アポのあった仕事も1件もキャンセルせず動いてた」
「邦子先生にも相談してくれて、武本先生といろいろと決めて…本当にその回転の速さと的確な行動力…尊敬するよ、藤司」
二人で話しながら歩き、すずめ屋が見えたところで
「私、藤司を人間的にも……ぇ…っと…何というか…ぇ…男性的にも…かな?……好き………です」
何とか告白できた…うん、できた。
「和花」
足を止めた藤司はそっと私の頬を撫で
「俺も、和花に惚れ直したんだよ…今回。今日からずっと…離さない」
というとぎゅっと強く抱きしめた。
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