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「それ、俺も1本もらっても?」
「のどかにやったんだ。とーじは喋れ」
しげちゃんがそう言うなら、私は勝手に藤司に串揚げをパス出来ない…レンコンもらお…
苦笑いの藤司の前におばちゃんがハタハタの南蛮漬けを置き
「他にお客さんは来ないし、ゆっくり食べて。でもまずは最後まで聞きたいね」
と頷く。おっちゃんはもうカウンターの中でお酒の入った湯呑みを持っていた。
「仲間の責任と言われたのは感じていない。半年前の忘年会で酔っての思い込みがあろうが、今回の通報も和花の会社へのメールもやるべきことでないと、誰もが判断出来る。そんなもの職業に関係なく判断することが出来て当たり前のことで、南田自身に問題があっただけ。だから俺はそこに責任を感じない。ここはよろしいですか?」
「いい」
「いいけれど…さっきの話じゃ、南田先生はいくらかのお金で解決したってこと?なんかねぇ…なんか、お金で解決しないことを…モヤモヤするねぇ、のんちゃん?」
「おばちゃん、あのね……トコトン話の通じない人だったから…最後なんて“じゃあね”って軽く言ってたような人に何も望めないよね?だから関わらないのが一番だよ」
「胸糞悪いアマだなっ」
「アハハハハッ……おっちゃん、ファンからの手のひら返し?」
と笑いながら、藤司と同じ胸糞悪いだよ…と隣を見ると、彼も笑って私の太ももをポンポンとした。
「金額は言いませんが………」
彼は前置きして言った。
「示談の金額は訴えた場合よりも数段多く出来た…それで和花には我慢してもらうことになるけど、俺なりに熟慮した結果です」
「よしっ、とーじは出来るだけあのオンナからぶん取ったんだな?」
「はい。おそらく…2割増程度は」
「そうなの?ふふっ…それって私が悪女にならない?」
「残念ながら、可愛いだけだな」
「いいぞぉ、とーじっ」
しげちゃんの声にチョウさんとおっちゃんが、パンッパンッ…揃わない一本締めのように手を打った。
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