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「和花が南田に言ったんですよ“すずめ屋に謝りに行って”って…俺、鳥肌もんの感動でした。自分が理不尽に陥れられた中で、まだ周りが見えてる器の大きな人間がここにいるってね」
「女の私も惚れるわ、のんちゃん」
「そこはもう少し控えめにお願いします、俺のなんで」
キャーっと言うおばちゃんと、頚椎が外れそうなくらい大きく頷くおっちゃんを見ていたら照れる暇もない。
「俺のなんで…はいいが、とーじ」
「はい、しげちゃん。何?」
「のどかがここに来るのを制限するなよ」
「大丈夫、しない。酒も麻雀も、和花の性に合ってていい。それこそ、俺は酒や麻雀に嫌悪感があるわけでないし」
「ねぇ…話が戻るんだけど」
「うん」
私が口を開くと、藤司は私に肩を触れさせて体と耳を傾けた…ちょっと重め……
「南田さんは忘年会のこと、武本先生の言う“戯言”を、そのあと毎日のように会ってるのに確認したりしなかったの?なんか不思議だね…」
「確認されてないから、寝耳に水の状態だったんだよな…」
「思い込みたかったんじゃない?いい夢をそのまま」
「おばちゃん、それは女心が分かるってとこ?私には分からないや…私だったら“40になったら結婚するよね?”って絶対に確かめる」
「和花は真っすぐいい女ってこと」
おぉ…もっともたれたら重い…っと…私が少ししげちゃんの方へ傾くと、藤司は私としげちゃんの肩が触れそうな2ミリの隙間に手を差し込むようにして私の肩を抱いて、真っすぐに戻した。
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