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「美南ちゃんどうしてるんだろう、って私が聞いたら“さあ?”って言ったでしょ?あれは嘘…ケンちゃん、同窓会で会ったんじゃないの?」
言いながら、私って“ミナミ”の付く人に面倒に巻き込まれるのか…と思った。
「……そうだな…会った」
「同級生同士で結婚してるんでしょ?」
「そう…今日は謝りに来たんだ」
「わざわざ?嘘ついたから?」
「そうじゃなくってさ、この…彼の前で言ってもいいのか…」
「いいよ。躊躇うってことは10年前に私がケンちゃんにコクった話?いいよね、藤司?昔の話」
“いい。今のもだし、最初からの、和花の声のトーンで問題ないと判断できるから、どーぞ”
藤司の声のトーンも通常運転だ。
「俺…言い訳にもならなけど、ちゃんと女の子と付き合ったことがなくて…」
「ウッソ…入れ食いっぽいイケメンが…なんてこと。私でも付き合ったことあるよ?いつも素が見えたところで、ガサツだとかでフラレるけど。あ、ごめん…話の邪魔したね…うん、それで?」
「ホント恥ずかしいんだけど…美南みたいな弱々しい女の子を守って男だ、みたいに学生の間ずっと思ってたんだと思う」
ほぉ~とりあえず頷いておく。なんか“ケンちゃん、ガンバレ”っていう雰囲気になってきた。
「でも今になってみると、やっと今なんだけど、対等に…守って守られて、ケンカするほど仲がいいってくらい気遣わずに話せて…っていうのがいいんだと気付いた…」
「なるほど…そしたら実家前にちょうど手頃な私がいた…ってことだね。ケンちゃんの顔を見てたら分かるくらいには、鼻タレてる頃から知ってるよ」
藤司に事情が分かるようにしながら、ケンちゃんにもそんなに凹まなくても大丈夫だと伝えたい。
「そんなに申し訳なさそうにしなくても大丈夫。この前、事情を聞かずにただ“逃げてもいい”って言ってくれたケンちゃんを悪く思わないから。お兄ちゃんやテツも一緒にこれまで通りだよ、大丈夫」
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